バイオリンは調整が必要な楽器です。格安の新品や、信頼できる工房・楽器店以外で購入する場合、調整されていないことがほとんどです。
でも、じゃぁ何がどうなってたらいいの?と思うかも知れません。ここでは、バイオリンの調整について書いていきます。
調整のポイント
ざっくりと調整ポイントはいかがあると思います。
- ペグ
- ナット
- 指板
- 駒
- 魂柱
- 弓
上から一つ一つ見ていきましょう。
ペグ
ペグは調弦を行うにあたり、重要な部品です。
バイオリンのペグは、ギターなどと違い木と木の摩擦で止まっています。そのため、巻いてもすぐ戻ってしまう場合は押し込む必要があります。
※たまにネットで購入して、「ペグがすぐに戻ってしまってチューニングできない!」という書き込みを見かけますが、これは別に壊れているわけではなく、押し込みが足りないだけなのです。
ペグは、ペグ自体とペグを入れる穴の両方が適切な状態にある必要があります。ここが適切に調整されていないと、細かい調整ができず、ちょっと動かしただけで大きく音程が動いてしまう、そもそも固くて動かせない…といった問題が起きます。前者であれば、テールピースに全弦分アジャスターがついていればそちらで微調整すればよいので何とかなります。
後者の場合、潤滑剤(コンポジション)を塗る等の対応が必要です。
コンポジションは写真のような、クレヨンみたいなものです。2000円しないで買えます。このくらいならば自分でやってみてもよいと思います。
ちなみに、ペグはちゃんと調整されていたとしても、経年の木のゆがみで再調整が必要になります。古いバイオリンの場合は、元がいくら良いものであったとしても、再調整が必要となる可能性があります。
格安のバイオリンの場合、そもそもちゃんと調整されていません。
ナット
ナットは弦の高さと溝の調整が必要です。
弦の高さはイメージつくと思います。格安のバイオリンだと高すぎることがあり、古いバイオリンだと低すぎることがあるイメージです。
高すぎる分には削ればいいのですが、低すぎる場合はナットの交換 or ナットの底上げが必要です。
他、溝の摩擦も結構重要です。摩擦が強いと調弦がしにくかったり、摩擦に負けて弦が切れたりします。
石鹸等を潤滑剤代わりに塗ればよいのですが、溝の形がそもそもおかしい場合は調整が必要です。格安のバイオリンの場合、こちらもちゃんと調整されていません。
指板
次に、指板です。
バイオリンの指板は、若干順ぞりの状態が正解です。とはいえ、反っているのではなく、そのように調整しているので「順ぞり」という言葉は適切じゃないかも知れませんね。
定規を当てた時に、指板と定規の間に隙間ができるのが適切です。
ここは調整されていなくても初心者にはわからないと思います。私もわかりませんが。ここが調整されていないと、弦の振動が指板に触れ、雑音の原因となります。
駒
駒は、高さ、位置、傾きと、弦を乗せる位置が調整の対象になります。
他、駒足が本体にピッタリ密着していることも重要です。なお、駒足がちゃんと調整されていても、傾きがおかしければ隙間ができます。このケースは自分で対処できます。
高さはそのまま弦高に直結します。アイリッシュなんかは低く設定するようです。高すぎれば削り、低すぎれば交換になります。
中古で買った場合などで厄介なケースに、ネック下がり(ネックが弦の張力に負けて起き上がり、指板が下に下がる現象)で弦高が高すぎるケースがあります。まともな修理はネックの角度調整などになるのですが、結構お金のかかる修理です。この場合、駒を低く削って逃げる方法もあります。
位置と傾きは、初心者には難しいかもしれませんが、ゆくゆくは自分でできるようになる必要があります。それは使っていればずれていきますし、弦交換の際は特に大きくずれるからです。
写真は、駒がネック側に倒れた状態です。弦を交換した際によくこうなります。この状態で調弦していると、そのうち倒れます。正しい状態は、写真の黒線のように、駒のテールピース側と本体が直角になることです。
次が駒の位置です。f字穴の内側の刻みを結んだ線に駒の中心が来るようにします。写真の黒線の位置です。
最後が、弦を乗せる位置です。上の図は駒と、弦を乗せる位置を示しているつもりです。4弦と2弦を結ぶ線と3弦の位置、3弦と1弦を結ぶ線と2弦の位置が重要です。この図では2弦が線から見て高さがあまりないので、2弦を弾く際に他の弦に誤って弓が触れる可能性が高くなります。アイリッシュなどでは重音(複数の弦を同時に弾く)が弾きやすいように、あえてこの高さを低く設定するようですが…
魂柱
f字穴の間から見える木の棒が魂柱です。表板の響きを裏板に伝える役割があります。中古で購入すると、たまに魂柱がなかったり、中に倒れていることがあります。魂柱も接着等はされておらず、木と木の摩擦だけで立っています。そのため、弦をすべて外してしまうと、表板からの圧力が減って倒れてしまうことがあります。(なので、弦交換する際は一度にすべて外さず、1本1本交換します)
魂柱の状態は素人が黙して確認することは難しいので、割愛します。
この位置や接地がうまくいっていないと、例えばヒステリックな音になったり、4弦は音が小さいけど1弦は音が大きい…といった問題が起こります。
弓
最後は弓です。弓は毛がちゃんとあれば大丈夫…と思いがちですが、しなりや曲がりの問題がまずあります。
へたくそな絵ですが、図を見てください。
①②は毛を張った状態の弓を横から見た図です。①が正常です。②は弓がへたっており、弓毛をしっかり張った状態にすると反りが逆になってしまっています。弓毛と弓の間は、弓の真ん中あたりで弓の太さ分くらい離れるのが正常ですが、②までいかずとも、かなり間を広げないと毛がしっかり張れない…というケースがあります。安物の弓の場合、修理は無理と思った方がいいかも知れません。
次に③④です。こちらは毛を張った状態の弓を真上から見た図です。③が正常です。④は沿ってしまっています。逆に反る場合もあります。(図はかなり大げさに書いています)
②④いずれの場合でも、熱して力を加えることで、ある程度矯正することができます。素人でも器用な人なら、ストーブ等で熱して手で力を加える…といった方法で多少矯正できるかも知れませんが、本来は工房でやってもらう作業です。
まとめ
ここまで書いてきた内容はすべて初歩的なことですが、バイオリンって色々調整が必要なんだ!ということがわかっていただけたのではないかと思います。
これらのことを知っていれば、バイオリンを買う場合は、手に取って見れるお店の場合はある程度チェックできますし、ネットショップでも「~の調整はされていますか?」と質問することができます。
既にバイオリンを持っている場合は、多少ならばセルフチェックすることもできるようになります!
この記事が楽しいバイオリンライフの一助になれば幸いです。