民族楽器を扱うとき、調弦に困難を伴うことがよくあります。
ギターのような機械式のペグを持つものであれば問題が起きることは少ないのですが、バイオリンのような木ペグの楽器の場合に、この問題に頻繁に直面することになります。
ペグの方式
ペグには大きく、機械式(ギア式)のものと木ペグがあります。
こちらの写真はギターの機械式ペグです。このタイプでなくとも、ギターはほとんどが機械式のペグです。このタイプのペグは、ペグを一回転させたとき軸はあまり回転しないため、調弦が容易です。民族楽器でも、このタイプのペグを使用しているものは多くあり、このケースはチューニングは難しくありません。
※とはいえ、錆びたりして異様に固くなっているようなケースは、油をさす等メンテナンスしないときついですが…
対して、木ペグは以下のようなものです。
こちらはバイオリンのものです。
木ペグの場合、ペグの一回転=軸の一回転のため、機械式のペグよりもたくさん回ります。つまり、ほんのちょっと調整したいときに、いっぱい動いてしまうので難しいんです。
さらに、このタイプではペグは木と木の摩擦だけで止まっています。ペグとペグを入れる穴は微妙に角度がついており、この角度が一致していること、ペグと穴が綺麗に当たるように調整されていないと、ほんのちょっと動かそうとしたとき、「カタっ」という感じで大きく動いてしまい微調整ができない…なんてことが起こります。(もちろん、これはバイオリンでも同様です)
民族楽器の場合、ここがちゃんと調整していない…場合によっては、そもそもペグと穴が綺麗に当たるように作られていないケースがあります。
しかも、奏者が楽器を自作するのが通常、というケースもあり(ネパールのサーランギなんかは自作します)、この場合はどうしようもないですね。
頑張って調整する??
では、木ペグのタイプの民族楽器を扱う場合、ペグを自分で調整できるようになった方がいいのでしょうか?
勿論、できるならそれがいいでしょう。バイオリン用のペグシェーバー(ペグを軸を削る鉛筆削りのようなもの)とリーマー(穴に角度をつける道具)を購入して、頑張ってみる方法もあります。
他、そこまで頑張らなくても、バイオリン用のコンポジション(ペグと穴の当たる部分に塗り、滑り・止まりをよくするもの)を塗って調整するくらいはできた方がいいかも知れません。ただ、楽器によってはそもそもペグや穴がガタガタのケースもあるのですが…
そこで、簡単にできる方法の一つして、アジャスターの装着をお勧めします。
アジャスター
アジャスターとは、その名の通り微調整するための道具です。
バイオリン用のものが手に入りやすいので、それを紹介します。
また、バイオリン用といっても、大人用のものと分数用でアジャスターの形状が異なります。
こちらの写真は大人用です。L字型ですね。
そして、こちらが分数用です。
こちらはギジェクという楽器に取り付けたところです。
大人用のアジャスターはあまり他の楽器に応用できないんですが、分数用のアジャスターは、取り付ける場所さえあればどこにでも取り付けられます。
写真はいい感じにテールピースに軽く固定していますが、別にちゅうぶらりんになってしまっても大丈夫です。
ねじを締めると、弦を垂直方向に押すことによって、微調整ができるようになります。
そもそもアジャスターをつける隙間がない楽器や、馬頭琴のように弦が太すぎる楽器には使えないですが、取り付けられる楽器も多いですね。
アジャスターで微調整できるようにしておけば、ペグ側でしっかり合わせることができなくても、アジャスター側で対応できるため、調弦が非常に楽になります。
あと、こちらはおまけですが、シタールのアジャスターです。
弦に通した白い球(鳥の形のも同様です)が表板に当たっており、玉の位置をずらすことで微調整します。
まとめ
木ペグの楽器を扱う際、素人でも簡単に調弦しやすくする方法は、
・ペグにバイオリン用のコンポジションを塗る
・分数バイオリン用のアジャスターを使用する
の二つの方法があります。
上記でどうしてもだめ…またはアジャスターを使用するスペースがないよ!という場合は、難易度は上がりますがペグシェーバーとリーマーを使用して調整します。
なお、ペグシェーバーとリーマーはちゃんとしたものはそれぞれ1~2万円ほどしますが、ebay等を利用すると二つで1万円以下で買うこともできます。
なお、この方法は結構難易度が高く、またそもそも穴が大きすぎる…なんて場合はブッシング(穴を一度埋めて空けなおす)が必要になることもあり、腕に自信のある人でもちょっと大変ですね…