ギターはハーモニクスでチューニングしてよいのか?

今回はギタリスト初心者~中級者に向けた内容です。

ギターのチューニング方法として、ハーモニクスによる方法(6弦5フレットのハーモニクスと、5弦7フレットのハーモニクスが同じ音になるように合わせる)があります。昔ギター初心者だったころ(今でも初心者ですが)、オクターブチューニングの際に12フレットのハーモニクスで合わせていたところ、ギターの上手な友達が「ハーモニクスじゃ合わないらしいよ」と言っていました。

今、音律に関する記事を書いていてそれを思い出したので、この内容について書いてみたいと思います。

ちなみに、先ほどの友達の話題は友達が間違っていたのですが、情報が曖昧だとこのような勘違いも出てくるものと思います。

ピタゴラス音律と平均律

ちょっと小難しい言葉が出てきましたが、簡単に説明します。

1オクターブが12半音で構成されていることはご存じと思いますが、どうやって12個に決めたのでしょうか?実は、この決め方が肝になります。

ピタゴラス音律は、3倍音、つまりギターでいうところのハーモニクスを使って12半音を作っていきました。具体的には、7フレットのハーモニクスは、5度上(フレットで言うと7フレット上の音のオクターブ上、つまり19フレット上の音)になります。6弦ならEの音なので、Bの音がこれで決まります。Bの3倍音は…と繰り返してできるのが、ピタゴラス音律です。

対して、平均律は、1オクターブの音の幅を均一に固定しているのです。そのため、ピタゴラスの5度と平均律の5度は異なります。

ギターのフレットは平均律で作ってあるので、ハーモニクスでチューニングしてしまうと、厳密には合わないことになるのです。

(※とはいえ、耳で聞いてもなかなか違いは判りません。そもそもギターでも弦を強く抑えるのと弱く抑えるのでは音程も変わるので、初心者にはなおさらどうでもいい事かも知れません)

個人的にはハーモニクスでのチューニングは合わせやすく、チューニングし終えた後和音がきれいに響くので好きですが、厳密には正しいチューニングの仕方ではない訳ですね。

なので、ギターで完璧にチューニングしようとしたら、チューナーを使うと、6弦5フレットと5弦開放が…といった方法でやっていく事が確実です。

※ちなみに、音律の話は「平均律、純正律、ピタゴラス ~音律の話」にまとめてますので、良ければご覧ください。

オクターブは?

冒頭に書いた、友達の「ハーモニクスじゃ合わないらしいよ」発言ですが、先ほど「友達が間違ってた」と書きました。でも、「ハーモニクスのチューニングは正しくない」とも書きました。

これはどういうことかというと、6弦と5弦、つまり4度の音をハーモニクスでチューニングするとずれるのですが、オクターブはピタゴラスでも平均律でも同じなのです。

つまり、オクターブチューニングをするために、12フレットの音と12フレットのハーモニクスが一致しているか、と確認するのはなんら間違っていない訳です。

友達の間違いは、各弦のチューニングをハーモニクスで行うのは間違い、というのを、オクターブチューニングもハーモニクスで行ってはいけない、と勘違いしたことにあります。

※ちなみに、オクターブチューニングが初耳!という方は、是非調べてください。オクターブチューニングは面倒な作業ですが、これをしないとギターが音痴なままになりますよ!!

終わりに

ギターはバイオリンと違い、演奏する側が音程を作ることはないですが、その代わり初心者が音程を軽視してしまう傾向があるように感じます。

まずは弾く前に注意深くチューニングを行うこと、これは後々の上達にも影響するので、確実に行った方がよいです。

ギターはフレットがあるとはいえ、チョーキングの際の音程だったり、フレットを抑える位置や抑える強さで微妙に音程が変わったりするので、この辺の感覚は身に着けておかないと、「チューニングはあっているのに音痴なギター」になってしまいます。

今回はそこまで深い話ではなく、単純に「ハーモニクスによるチューニングは厳密には正しくない!」という話だけでしたが、音律一つとってもとても深い世界ですので、興味のある方は是非、色々調べてみてください。