フラジオ、ハーモニクス – 弦楽器の特殊奏法

フラジオレットという言葉を聞いたことはあるでしょうか?
ハーモニクスは?

どちらも同じものを指しますが、バイオリンの世界ではフラジオレット、ギターの世界ではハーモニクスといいます。さらに言うと、ギターでは「ハーモニクス(ナチュラルハーモニクス)」「人工ハーモニクス」「ピッキングハーモニクス」など、いくつかの奏法に分かれます。バイオリンにピッキングハーモニクスはないですが(やろうと思えばできなくはない)、バイオリンの世界ではハーモニクスも人工ハーモニクスも「フラジオレット」といいます。

今回は、これらの「仕組み」についてお話ししたいと思います。
この話はバイオリンの先生もあまり詳しくないようだったので、もしかしたらバイオリンの世界だとあまり語られないのかも知れません。
ギターではそこそこ語られるイメージはありますが、「ピッキングハーモニクス」については奏法の解説はよく見かけるものの、「仕組み」の説明はあまり見かけないように感じます。

なお、この記事では、「ハーモニクス」という言葉で書かせていただきます。

そもそも、ハーモニクスってなに?

ギターなら、透明感のある澄んだ音、バイオリンなら笛のような音と形容されるでしょうか?

ギターなら、例えば7fや12fに指を軽く添え、弦をはじいたときに出る音です。
バイオリンなら、5度や7度(E線ならHやオクターブ上のE)を指で押さえながら弾きます。

そもそも、多くの楽器の音は、基音(実際に弾いた音)だけでなく、その2倍音、3倍音…が同時に鳴ります。例えば、ドの音を弾いた場合、ド、オクターブ上のソ、2オクターブ上のド、2オクターブ上のミ…といったように、無数の音が重なるのです。(この倍音がそれぞれどのくらいの音量でなるかによって、音色が変わります)

上の図を見てください。弦の振動をイメージした図です。
1番上が基音、2番目以降がそれぞれ、2倍音、3倍音、4倍音の振動です。
目ではあまりよく見えませんが、実際の弦を鳴らすをこれらの振動が重なり合った振動をします。

ハーモニクスでは、指で軽く触れることで、その位置に節(しぼんでいるところ)を持つ倍音以外をミュートすることで、高い音が出るのです。
例えば2倍音の節を抑えると、基音、3倍音、などの音がミュートされ、2倍音の音が出ます。ちなみに、2倍音の音は、基音のちょうど1オクターブ上です。

ここでちょっと気づいたでしょうか?
ギターでは、12fの位置に軽く触れると、1オクターブ上の音が出ます。バイオリンなら、解放の1オクターブ上の音です。これらの位置は、どちらも弦の半分の位置です。

※理屈的にはこの通りなのですが、ギターもバイオリンも、その位置を「押さえる」と弦が下に下がるため、弦の張力が少しだけ増えます。なので、厳密にはその分誤差が出ます。たいていの場合は無視できますが…

ハーモニクスが鳴る位置

今まで単純に12fとか7fとか言っていました。
ハーモニクスが鳴る位置には実は決まりがあります。
それは、弦長の整数で割った位置です。

二分の一の場所、三分の一の場所、4分の位置の場所…理論的には無限にありますが、あまり細かくなってくるといい音が出ず、演奏には活用しにくいです。

ちなみに、二分の位置は1オクターブ上の箇所(ギターなら12f)で、ちょうど1オクターブ上の同音の音が鳴ります。
三分の一は5度(ギターなら7f)の箇所で、1オクターブ上の5度の音が出ます。開放弦がEだとしたら、オクターブ上のBですね。ちなみに、三分の二の位置でも同じ音がします。
四分の一は4度(ギターなら5f)の箇所で、2オクターブ上の同音の音がします。

人工ハーモニクス?

ハーモニクスは、音が出る場所が決まっていました。先ほどの例だと、基音がミなら、オクターブ上のミ、オクターブ上のシ、2オクターブ上のミ…という感じでしたね。では、例えばオクターブ上のファは出せないのでしょうか?

ギターの場合、開放弦で行うハーモニクスを、ナチュラルハーモニクスといいました。ハーモニクスの音は基音に影響されるので、ナチュラルハーモニクスの場合「オクターブ上のファ」は出せません。

でもここで、「1フレットを抑えて、基音をファにし、それに対する二分の一の位置(13フレット)」を押さえたら、どうでしょう?これでファの音が出せます。(指弾きの場合は親指で触れて人差し指で弾く、などでできます)

このような奏法を、ギターでは人工ハーモニクスといいます。

バイオリンの場合、ギターほど弦が長くないので、比較的よく使われます。それ故か?ナチュラルハーモニクスと人工ハーモニクスといった言葉の使い分けはせず、一律「フラジオレット」といいます。

ちなみに上の譜面ですが、「一番下の音を押さえ、2番目の◇の音符の位置に軽く触れて弾く。そうすると、一番上の音符の音が出る」という意味になっています。バイオリンの楽譜です。

ピッキングハーモニクス

バイオリンにはない技法ですが、ギターにはピッキングハーモニクスという奏法があります。これは、先ほどの人工ハーモニクスの、軽く触れる位置をピッキング後にピッキングを行った側の手で軽く触れる奏法です。

多くの場合、アクセントとして使われるので、場合によって2倍音、3倍音、5倍音など出る音が安定しないですが、逆にそれがよい!という感じになっています。

ピッキングハーモニクスが出ない場合、先ほどの人工ハーモニクスの理屈に沿って触れる位置を調整することで出しやすくなります。5倍音の場合、五分の一の場所だと指板の方になってしまいますが、五分の三の位置でも 五分の四の位置でもいいわけです。さらにアクセントとして使うから何倍音が出てもいいや!ということであれば、この何分の何が近い位置で集中するポイントがあるので、それを探してもいいでしょう。

なお、私は見かけたことはないですが、上記触れるポイントを確実に抑えれば、ピッキングハーモニクスでも狙ったメロディーを弾くことができます。

終わりに

この記事を書こうと思ったきっかけは、バイオリンの先生が楽譜のフラジオ(先ほど出てきた譜面です。出したのは一部だけですが…)を見て、「わからない」といったことが一つありました。

先生のことは尊敬していますし、腕は確かなので、「もしかしてこういった理屈的なことはあまり話題に上がらないのかな?」と思ったためです。

同様に、ギターのピッキングハーモニクスについても、触れるべきポジションの話題を見たことがなかったことが、もう一つです。

あまりしょっちゅう使うテクニックではないですが、皆様のお役に立てれば幸いです。