これからバイオリンを始めたい!という人がバイオリンを買う際の注意事項

バイオリンを始めたい!と思った時、まず思いつくのがバイオリンを買うこと。ところが、ネットの情報を探してみると、「~このバイオリンはどうでしょうか?」という質問はあっても、大抵答えは「まず先生について、先生に選んでもらってください」「そのバイオリンは楽器ではなく置物です」という答え。

それは確かにその通りな部分もあるけれど、それではバイオリンをやりたい!って人も減っちゃうなぁ…ということで、バイオリンを習い始めて5年ほどの私が思うところを書いてみます。なお、メンテナンスも懇意にしている工房で習ったりなど、ある程度は自分でもやるので、ある程度のお役には立てると思います。

前提として「先生に選んでもらう」「安すぎるバイオリンは置物」というのは正論です。先生について選んでもらったり、高いバイオリンを買える人はそうするべきです。

大人用?それとも子供用?

あなたが購入を検討しているバイオリンは大人用でしょうか?それとも子供用でしょうか?

いきなり元も子もないこと言ってしまいますが、悪いことは言いません、子供用のバイオリンは信頼できる楽器店以外での購入はやめましょう。新品・中古どちらにしてもです。子供用のバイオリンはレンタルをお勧めします。レンタルはバイオリン教室でしていることもあれば、楽器店で行っていることもあります。

子供用のバイオリンは定期的なサイズアップが必要で、半年~1年半くらいで次のサイズに移ります。そのために、リスクを冒してよくわからないお店やネットオークションから買うことはお勧めしません。

以降は、大人用前提で話を進めますね。

新品がいい?それとも中古?

新品は高いから、とりあえず中古で…と思う方も多いでしょう。しかし、中古でバイオリンを買うことにはリスクがあります。
そもそもバイオリンでは中古という考え方はなく、主にバイオリンをよく知らないお店や、量産品の安価なバイオリンでのみ「中古」という言葉が使われます。
そして、安価なバイオリンでは、職人によってしっかり調整されたものは新品より高い…なんてこともあります。

いきなり結論を言ってしまいますが、信頼できる工房や楽器店以外で中古を買うのは非常にリスキーです。リサイクルショップやネットオークションなどでの購入はやめましょう。

アコースティックか、それともエレキか

バイオリンといえばアコースティック(エレキに対比させてこう言ってますが、普通のバイオリンのことです)が普通です。エレキはバイオリンと同じ弾き方ができる別の楽器と考えた方がよいと思います。音も全然違います。

Carlo giordanoのエレキバイオリン

バンドで使いたいなど、アンプにつなぐ場合、通常のアコースティックバイオリンにピックアップをつける方法もあります。取り付けは難しくなく、簡単なものだと駒に取り付けるだけですね。この方法は生音を拾う感じになるので、比較的バイオリンらしい音が出せます。

バイオリンらしい音じゃなくていい!エフェクターガンガン使いたいんじゃ!という方はエレキでもいいでしょう。

アコースティックがいいんだけど、音が大きいからな…という理由なら、サイレンサーをつければ音はエレキ並みに小さくすることもできるので、アコースティックをお勧めします。消音効果の高い金属製のサイレンサーでも、2000円くらいで買えます。
でもうちすごい壁薄いから…というのでしたらエレキでもいいかもしれないですね。エレキ+サイレンサーなら音はかなり小さくなります。

ゴム製のサイレンサーを装着した様子。金属製の方が消音効果は高い。

クラシックをやる?それとも他の音楽?

アイリッシュやブルーグラスでは、「バイオリン」言わず「フィドル」といいます。どちらも同じ楽器です。調整の仕方がちょっと違います。細かいこと気にしなければ、普通にクラシック用のバイオリンで大丈夫ですけどね。

個人的な意見ですが、アイリッシュやブルーグラスをやるなら、安いバイオリンでもいいと思います。クラシックと違い、安物の少し潰れた感じの音が逆に魅力だったりするからです。とはいえ、高いもの買えるならその方がいいですし、あまりに安すぎるものは避けた方がよいでしょう。

バイオリンを選ぶ!

ようやくここでバイオリンの選び方です。

新品で安いバイオリンといえば、Hallstatt、Stentor Student、
Carlo giordano 、Suzuki、Eastman、YAMAHA等が有名です。

他にもノーブランドなどで、1万円以下のものもあります。上記の中で、Suzuki、Eastman、YAMAHAはちょっと割高で、6万~程度です。

HallstattやStentor Studentは1万円~、Carlo giordanoも2万円~あります。これらの楽器で注意したいことは、調整されているか?と、弦です。

ギターをやっている人からすると衝撃的なんですが、バイオリンの弦は高いです。よく使われる弦はドミナントというものなんですが、5000~8000円くらいします。バイオリンの世界で、弦1セットで5000円というのは、実は安い方です。1万円~で売っているような楽器は、勿論そのような弦が張っているわけではなく、数百円レベルの、バイオリンの世界では信じられないくらい安い弦が張られています。そのような安い弦は、ぶっきらぼうというか、かなりヒステリックな音がします。

次に調整です。バイオリンは意外と簡素なつくりなので、調整がだいぶものをいう部分でもあります。例えば、ペグは木の摩擦だけで調弦を保つので、ちゃんと調整されていないと、そもそも調弦ができません。ですが、テールピース側にアジャスターがついていれば、ペグがしっかり調整されていなくても、アジャスターでカバーできます。なので、安いバイオリンを選ぶ際は全弦アジャスター付きのものにしたいですね。(ものによってはE線しかついていないものもあります。あとから別途アジャスターを追加することもできるんですけどね)

全弦アジャスター付きのテールピース。アジャスターなしのテールピースに
4弦分つけるより、こちらの方が軽くてよいらしい。

次が、駒の角度です。バイオリンは、弓で弦を弾くので、駒に角度がついて、任意の一弦だけ弾くことができるようになっています。ここがちゃんと調整されておらず、直線に近ければ、弾くときに他の弦に触ってしまい、ノイズが出てしまうんです。(アイリッシュやブルーグラスでは、重音(複数の弦を同時に弾いて和音を出すこと)が弾きやすいように、あえて角度をあまりつけないセッティングもするようです)

他にも、魂柱の位置なんかもあるんですが、1万円~のバイオリンであればそこは妥協でよいでしょう。

そのうえで、前述のバイオリンを比較すると、Hallstatt<Stentor Student<Carlo giordanoの印象です。個人的には、Stentor Student以上を選びたいところです。さらに、購入時に調整を行ってくれるお店があるなら、そこをお勧めします。

SuzukiやEastman、YAMAHAのものに手が出せるなら、そちらをお勧めします。SuzukiならできればNo.330より上のグレードを選びたいです。200番台はプレス工法という、板を削って作るのではなく、圧力をかけて成型する工法で作られています。Eastman、YAMAHAは削り出しです。このレベルのバイオリンならば、ちゃんと先生について習うにしても、しばらく使うことができます。

ちなみに、Stentor Studentのバイオリンは1万円~と書きましたが、懇意にしているバイオリン工房では、中古を2万5千円で売っていました。しかし、それは上述の調整などを考えれば決して高い金額ではないです。「最低限の状態」に持っていくだけでも、若干の調整や、弦の交換が必要になるからです。

なので、探せば1万円未満のバイオリンも見つかるのですが、楽しいバイオリンライフを送るためには、調整料込みで3万円~は見ないと厳しいかと思います。

逆に、調整済みのバイオリンで安いものを見つけることができれば、それでも良いかもしれません。

そしてもう一点。このクラスのバイオリンであれば、弓も付属します。バイオリンを始めるにあたって、「本体は安くてもいいけど弓はいいものを選びたい」とはよく聞く話です。それも全くその通り。あまりに安すぎる弓は、コシが全くなくへにゃへにゃしています。そういった意味でも、できるだけいいバイオリンセットを買いたいところです。個人的には、上記メーカーなら、「なんとか」OKかな、と思います。ただ、Hallstattは新品購入したことがないのでわからない、というのが正直なところですが…

まとめ

バイオリンを買う場合、「ちゃんと調整されていること」が重要です。安すぎるバイオリンは、調整されていません。

安いバイオリンを見つけた場合は、買う前にまず調整されているか確認しましょう。調整されているなら、どんなに安くても問題ないと思います。

そして、できれば弦もドミナントなどのナイロン弦にしたいですね。