皆さんはバイオリンの弓の竿の状態を気にかけていますか?
バイオリンの弓は、まっすぐな木を曲げて作っているので、経年のうちにソリが出来たり、コシが弱くなったりします。
今回はその矯正方法について解説します。
と、その前に。
バイオリンの弓は、ペルナンブーコ(フェルナンブーコ)という木材でできています。安価なものだとブラジルウッドの場合もありますが、ペルナンブーコとブラジルウッドの違いはグレードの差で、どちらも同じ木です。
とはいえ、最近はカーボンファイバーであったり、アーバー等の別の木材でできたものも販売されています。
話は戻りまして、このペルナンブーコ。熱を加えて曲げると、いい感じに曲がり、それが持続する、という特性を持つ木材なのです。
そのため、経年で反ったりコシが弱くなっても、ソリを直したり、コシを入れなおしたり、といったことが出来るのです。
こちらの写真、よーくみると左側に反っているのがわかりますか?
こちらが経年のソリになります。コシは、これの上下方向ですね。
これを修正するために熱を加える必要があるのですが、我が家では電熱式のストーブを使用しています。
こういうやつですね。
ちなみに、ソリが軽微であれば熱を加えずとも矯正できる場合もあります。
まずは、弓をよーく見て、どこが矯正するポイントか?(曲がっている場所か)見極めます。
場所がわかったら、その付近に熱を加えます。
私の場合は、先ほどのストーブにかざして10数え、裏返して10数えます。
あっため終わったら、力を加えます。
こんな風に、曲げたい方向に力を加えます。
勿論、力加減には注意してください。強すぎると折れると思います。
また、力を加える方向を間違えると、別の変なソリが出来てしまうので気を付けてください。
あ、コシを入れなおす場合は、この曲げる方向が垂直になるだけです。
十分に力を加えた後、しっかりと冷まします。
なんと、これだけで作業完了です。
パット見簡単ですが、慣れるまで弓に変なソリをつけてしまったりするかも知れません。十分に気を付けてください。
また、ヘニャヘニャな弓とそうでない弓では、ヘニャヘニャな弓の方が矯正しやすいです。(※ソリがつけやすい、という意味。調整がしやすい、という意味ではない)
最後に矯正後の写真を載せたかったのだけど、今回はコシの入れ直しをやっていて、写真では違いがほとんど見れなかったので割愛します。
なお、もし弓の毛替えをご自身でやられている場合、それが原因で反ることもあります。毛の張り具合が均一でなく、一方に偏っていると、片方の張力に引っ張られて反ってしまうこともあります。
※以前、何かの記事で、「優秀な職人は、毛替えのバランスで弓のソリを調整できる」と読んだことがありますが、行きつけの工房では「そんなことできないよ」と言っていました。ちょっとかじったものの意見としては、「弓の毛の張力のバランスで、多少調整はできる。しかし、弓毛自体伸び縮みするものであるから、ちゃんとした調整という意味で考えると、慰め程度にしかならない」のかなぁ、と思いました。