弓は、使っていると曲がったり、コシが弱くなったりします。
弓は主にペルナンブーコ(フェルナンブーコとも)やブラジルウッドという木材が使われており、どちらも同じ木で、グレードの差なのですが、こちらの木材には、「熱を加えて力を加えると曲げることが出来、それが持続する」という特徴があります。
なので、熱を加えて矯正したい方向に曲げれば、曲がり矯正や反りの入れ直しが可能となります。
今回矯正するのはこの弓です。コシがなくなってしまい、弓毛を緩めた状態で、毛とスティックの間が大きく開いています。
マスキングテープで印をつけた場所は、正常な弓と比べて一番ずれていたところ、つまり今回主に力を加えて曲げたい部分です。念のためスティックと毛のよりを測ったところ、8mmほど。
ちなみにこの方法、カーボン弓にも適用できました。
全てのカーボン弓でできるかは知りませんが…いずれにせよ自己責任でお願いします。
熱を加える
うちではこのような電気ストーブを使って行ってます。曲げたいポイントにうまく力がかかるようにしています。両脇固定してマスキングテープの場所を押してもいいんですが、治具作るのも面倒だし、かといって手でやると熱いので…
※写真の状態でも結構熱いです。火傷に注意してください。
弓全体に熱が行くように、時々裏返したりします。手が逆になっているのはそれが理由です。
私の場合、前、後ろをそれぞれ10秒くらいずつ上記のように行い、矯正具合を見ながらこの作業を繰り返していきます。
弓によって簡単に治るものもあれば、力を加えて何度やってもなかなか治らないものもあります。
最終チェック
コシの矯正が出来たら、曲がりがないか確認します。
最初から曲がっている場合もあれば、コシを入れる方向を間違えて曲がってしまった場合もあるからです。
わかりにくいですが、ちょっと右に反ってしまいました。
この場合、コシを入れる場合下方向に力をかけたのに対し、左に曲げたいので同じ要領で左に力を加えます。写真のように弓を眺め、どこに力を加えればよいか確かめます。実際にもう片方の手で軽くここかな?と思う場所を曲げてみてまっすぐになるようであれば備後です。くねくねになった場合は違う場所なので、事前にちゃんと探しましょう。
なお、曲がりを治す場合、横に力を加えるのではなく斜め下に力を加えるようにしています。曲がりと一緒に、コシも矯正しちゃおう、という魂胆です。
完成!
作業が終わり、組み立ててマスキングテープの場所を測ってみました。
最初8mmくらいあったものが3~4mmほどまで矯正されています。
このくらいまで矯正できれば、コシもある程度戻ってきます。
なお、作業直後はまだ弓が熱を持っているので、フロッグを外して冷めるまで待ちます。
なお、この作業は工房でももちろんやってもらえますが、ソリが気になる…という方は一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
なれると、意外に簡単にできますよ!
※注意※
この後治具を作って長時間熱にさらせるようにしたんですが、あまり長時間熱を加えると、弓がふにゃふにゃになってしまいました。こうなったら(多分)お終いなので注意してください。