今回はヴィオラ・デ・コチョの修理を行います。
メルカリで購入したのが、2020年頃。
だいぶ長い間放置しちゃいました。
購入した時の写真は残ってないんですが、メルカリに出品されていた画像がとある書籍に無断掲載されておりました。それがこちら。
写真ではよくわかりませんが、結構状態悪かったです。
・ペグの遊びが多すぎ、しっかり止まらない
・5弦ペグ側のヘッドが壊滅しており、接着剤でふさがれていた
・フレットガットがピンクの被膜付き電線が使われ、接着剤で止められていた
・ヘッドの突板が割れている
といった状態です。
特に5弦ペグのヘッド壊滅が問題だったので、該当部分を切り落とし、廃ギターから取ったマホガニーの角材で埋めました。それが2020年ころ。その写真がこちら。
仲良く他の楽器も映っていますね。
この後、廃ギターの裏板だったかな?をヘッドに貼り付けで、以後放置。
今回はここからのスタートです。
突板はがしと、ブッシング
まず、ペグ穴の状態がよくないので、ブッシングすることにしました。
ブッシング材は何がいいか迷ったんですが、堅めで、ネックの色に近い黒色の物、ウォールナットを選びました。とはいえウォールナットの丸棒なんてその辺では売っていないので、メルカリで売っている人を探しました。結果的に、直径12mmのウォールナットの丸棒に加工してくる、という方を見つけられたので、お願いしました。
で、ブッシングするにあたって突板が邪魔なので外すことに。
突板は、毎度おなじみタイトボンドで接着しています。
タイトボンドは100度くらいで柔らかくなるとの情報があったので、早速温めました。
十分にあったまったら、スクレーパーで剥がしていきます。
見事にスクレーパーが入っていきます!
塗装がされている楽器だと、塗装が溶けてしまうのでこのように温めることはできませんが、ビオラ・デ・コチョは無垢材のままなので、このまま温められます。
これ用に100均でスクレーパーを買ったのですが、厚みがあったためにホームセンターで3~400円のものを買いました。けど、気が付いたら100均のスクレーパー使ってました。
ちなみに、100均のスクレーパーと言えど、さっきぽは金属用のやすりで削ったので、ちょっと鋭くなっています。
無事に突板が剝がれたんですが、割れちゃいました。これでは再利用ができません。
折角なので、新しい突板もウォールナットを使おうと思い、メルカリで2.6mm厚の薄板を購入しました。
ブッシング用の穴をあけるためには、12mmのドリルが必要です。(12mmの丸棒を買ったので)
既にペグ穴が開いているため、このままではドリルが滑ってしまい、うまく穴を開けられそうにありません。なお、このドリルビットは先端が細い針のようになっており、そこで中心を決めるタイプです。なおさらこのままでは使えません。
なので、一旦木材で穴をふさぎました。
仮穴埋め
使った木材はペルナンブーコ。昔息子におられたバイオリンの弓です。
後から思ったんですが、仮埋めには固い木材ではなく、柔らかい木材使った方がドリルの刃がすっと入っていくので、そういうの使った方が良さそうでした。
なお、タイトボンドにはペルナンブーコの粉も混ぜてます。
ちなみに、こちらも後から思ったんですけど、細かい溝を埋めるには、細かい粉よりも、ドリルで穴を開けた際に出るクズのように、ある程度荒さがあった方が良さそうでした。
で、仮穴も無事埋まったので、ブッシング用の穴を開けます。
泣いてもいいですか?
なんとドリルの圧?に負けてヘッドがかけてしまいました…
仕方ないので、後で接着することにして、穴あけ作業を進めます
今度は割れないように、クランプで挟みながら穴を開けました。
ブッシング
穴開けが終わったら、ブッシング材を詰めていきます。勿論接着に使うのはタイトボンド。
なかなか入らないので、金槌でたたきました。
泣いてもいいですか?(2回目)
なんとヘッドが折れてしまいました。
他にも、割れたりとか色々あったので、ブッシング材がきつきつの場合、無理に入れようとせず、穴を拡張するか、ブッシング材を細くしたほうがいいようです。
後からわかるんですが、この本体(ヘッド含む)の木材はかなり柔らかいものが使われていました。そこに堅い木を無理やり入れたらそら割れるな、って感じでした。
ブッシング材を入れ終わったら、欠けたヘッドと折れたネックをタイトボンドでくっつけます。
ネックは角度があってクランプできなかったので、壁に立てかけます。ほんのちょっとですが、これで圧がかかります。
これで結構がっちりつきましたが、また折れてはかなわないので、あとで補強材を入れることにします。
突板の貼り付け準備
ヘッド表側の隙間に、穴を開けた際の削りクズをタイトボンドに混ぜて流し込みます。
後で新しい穴を開けるときのために、できるだけ隙間がない方が好ましいので、このようにしました。
で、作業してて気付いたんですが、ヘッドいじるとなんか本体が揺れるんですよね。
よくよく見たら、ヘッドの付け根に亀裂がありました。
なので、タイトボンド流し込んでクランプ。
ネック折れ補強と突板の貼り付け
ネック折れの補強には、ペルナンブーコを使う事にしました。
ペルナンブーコは曲がり耐性もあるので、ネック折れ補強にはうってつけのような気がします。
下の写真のように、溝を掘りました。
掘ってわかったんですが、この木めっちゃ柔らかい…
溝に埋めるペルナンブーコも切り出します。
ちょっと大きめに作りました。
次は、ネックの角度に合うように、補強材を曲げます。
こんな感じでやったんですが、このクランプでは力が足りなかったので、普通のCクランプを使いました。
Cクランプとはこういうやつです。私はホームセンターで買いました。小さいやつなら100均でも買えます。買った時のメーカーとか忘れたので、Amazonリンクは貼りません。Cクランプで検索すると出てくるので、ほしい方は検索をお願いします。
で、私がちょっと好きなのが、このCクランプのここの形。
ちょっと溝があるんですよ。丸いものをクランプする時とか、この溝にはめると良い感じに押さえられるので、便利です。
で、途中なかなか曲がらないので、煮てみたりしました。
そしたらなんと、水がピンクになるじゃないですか!!
で、最終的に出来上がったのがこちら。
端っこが少し割れてますが、大丈夫な出来です。
これを整形して溝に埋めます。
折角なので、突板も一緒につけてクランプします。
突板は、先ほども書きましたが、2.6mm厚のウォールナット。
ヘッドの形に合わせるため、鉛筆で形を書き、大体の感じでカットします。
で、こう。
接着が完了したら、突板をヘッドの形とぴったり合うように加工します。
彫刻刀で削り、最後やすりで仕上げました。
新しい穴あけ
次はいよいよペグ用の新しい穴を開けます!
ペグは、バイオリンの物を使用しようと思い、ebayで買ったんですが、ちょっと短そうだったので、オリジナルの物を使う事にしました。
こちらが3年間保管していたオリジナルのペグです。
ナットも入っていますが、溝が大きいので、牛骨で作り直しました。
牛骨はメルカリで買いました。
まずは下穴を開けます。先ほど紹介したドリルビットの6mmを使いました。
できるだけ垂直になるよう気を付けて開けます。
出来たのがこちら。
裏から穴を開けたので、突板にバリが出ています。
こちらはやすりで削りました。
それが出来たらリーマーでテーパー(角度)のついた穴を開けます。
これはバイオリン用のもので、ebayで買いました。
リーマーで穴を拡張するときに注意することは、直角にすることと、穴を開けすぎないことです。
ペグの太さがバラバラというのもありますが、ペグを入れた時、穴も若干広がります。
なので、その穴の広がりも考慮して、少し小さめの穴にします。
あと、端折ってますけど、ここにペグをそのまま突っ込んでもぎちぎち言ってよく回りません。
なので、バイオリン用のコンポジション(ペグの滑り易さ、止まり易さを調整するやつ)を塗りたくってます。
で、ちょっとそれますけど、楽器のお尻側に、大量の亀裂がある事がわかりました。私ここ修理してないんですけど、一部ボンドがついていたので、前オーナが修理しようとしたようです。
亀裂にはタイトボンドを流し込み、穴を開けた際に出た木くずで溝を埋めました。
一部クランプが必要だったので、長い子の登場です。90cmあります。
余談・オイルフィニッシュ
ここでちょっと余談です。
ブッシングの際に割れたのは、木が乾燥して割れやすくなっていたのではないか?と推測し、油をしみこませました。
ちなみに使ったのはシェーバーオイル。バイオリン工房で、職人さんが、油仕上げに使う油はなんでもいい、なんならバターでもいい、と言っていたので、臭くないやつなら何でもいいやと思って使いました。
けど、シェーバーオイルって割高なんですよね…
なので、亜麻仁油を買いました。こちらは今回は突板にだけ塗ってます。
ちなみに、下の写真の左がオイルフィニッシュ前、右がオイルフィニッシュ後です。
色が全然違います。真っ黒くなりました。
一応の完成、そして弦どうしよう?
一応の完成です。完璧にするには、ここにフレットガットを取り付ける必要があります。
で、今までの修理と並行して考えていたんですが、弦どうしよう?という事です。
一応上の写真は、購入時に張ってあった弦です。
まず、チューニングは上記の通り。ただし、上記は1オクターブ高く表記してあります。
これをもとに、クラシックギターの弦のゲージを参考にすると、1弦のD4には、クラシックギターの2弦が使えそうです。
が、一応もともと張ってあった弦の太さを図る事にしました。
使うのは、マイクロメーター。
5弦~1弦に向かって、0.797、0.728、1.008、0.776、0.441(mm)でした。4弦が3弦より細いのは、ワウンド弦だからだと思われます。それにしても、1弦細すぎです。クラシックギターの1弦でも、0.7mmくらいあります。
ただ、テンションが弱い弦を使う楽器、という可能性もあるので、悩ましいところです。
なので、どんな弦を使ったらいいか調べました。
けど、見つからない…ブラジルのAmazonでも弦売ってないし…英語とポルトガル語で誰か教えてくれとツイートするも、無反応…途方に暮れていたところ、Youtubeで以下の動画を発見!
ポルトガル語なので何言ってるかわからなかったんですが、Youtubeって、アップロードした人が設定してたら自動で字幕出せるんですね。英語の字幕で何となくわかりました。
cordaが弦で、violãoがギターを表すみたいです。
この人によると、1,2弦はクラギの1,2弦、3・4弦はクラギの4弦、5弦はクラギの3弦か5弦とのことでした。民族楽器でもろそうなので、5弦にクラギの5弦はリスキーなので、3弦の方が良さそうです。
完成!
最後に、フレットガットを巻きます。
ガットと言っても、ナイロンですが。
0.81mmくらいの太さなので、クラシックギターの2弦相当です。
巻き方は、以下を参考にしました。
ちなみに、ナイロンはつるつるするので、全体的にやすりで傷をつけて使いました。
で、完成したのがこちら!!
何回も失敗しましたけど、結構うまくできたと思います。
試奏の様子はこちら。
おしまい
と、いうわけで、入手してから3年ほど放置して、やっと演奏可能な状態になりました。
新しい弦は只今注文中なので、届いたらまたアップしなおそうかと思います。
ちなみに、元から張ってあった弦はテンション弱すぎでした…
今回も長くなりましたが、お付き合いありがとうございました。