ウズベク・ルボッブの修理 repair of uzbek Rubob

ヤフオクでかわいそうなルボッブを見つけたので保護しました。
状態は、裏板ひび割れ、ネックの角度上がりなどなど。

今回はその一連の修理過程について書きたいと思います。
ウズベク・ルボッブについての詳細はこちら。

楽器の状態

さて、では状態を見てみましょう。

完全にぱっくりいってます。
押してもふさがらないので、木で埋めるしかありません。
というか、こんなに開くのって、作ってるときによほど乾燥の甘い木を使ったとか、残念な理由しか思い浮かびません。

あと、写真にとってないんですが、ネックの角度がかなり上がっていたので、ネック矯正と同じやり方で角度を下げました。
ネックの矯正のやり方は以下の記事にも書いてますんで、よかったら見てみてください。

ネックの隙間を埋める

で、またまた写真ないんですが(適当にTweetしていたものをまとめた記事なので…すみません)、表側本体とネックの間に隙間が空きました。ここを放置しておくと、またネックの角度が上がりかねないので、よこから楔を打ち込み、また、指板下に1mm厚のマホガニーを入れました。いずれもタイトボンドで止めています。

余談ですけど、タイトボンドには使用期限(1年だったかな)があり、それを過ぎると接着力が弱くなるそうです。なので、代わりにゴリラウッドグルーをお勧めしているところもあります。
ただ、私は使用期限などとっくに過ぎたタイトボンドを使用していますが、特に困ったことはありません。

写真はこんな感じです。

接着が終わったら、彫刻刀で丁寧に余った部分を取り除いていきます。
失敗したら皮が破れるかもなので、慎重にやりました。
ちなみに、色が違うので茶色いオイルニスを塗ってみたんですが、後述のアクリル絵の具で塗ればよかったな~と思いました。
ちなみに、使っているオイルニスはAmazonでは売っておらず、楽天で買いました。
これも何年も前の話です。

裏板の補修

さて、次は裏板の補修です。
ネック角度矯正の時に、裏板の膠?が少し柔らかくなったようで、裏板のヒビもちょっと広がっていました。なので、そこにもタイトボンド流し込んでベルトクランプで止めています。

ここで埋木に使っているのは、ペルナンブーコです。別に色が近ければなんでもよかったんですが、昔息子に折られたバイオリンの弓があったので、それを使いました。
またまた写真に残ってないですが、埋木する前に水につけて熱を加えて、角度つけてます。

埋木は、ネック側の溝が広く、お尻に行くほど狭まるので、その形に合うように加工しています。
また、付け根のところは結構深さがあり、準備した埋木では足りなかったので、木の削りカスを詰めています。

ここのクランプはあまり力が要らないので、バークランプで固定します。

接着が完了したら、彫刻刀で余った部分を丁寧に取り除きます。
この時、木目に沿って裂けるようになってしまうことがあるので、かなり気を使いました。
溝より深く削ってしまったら困るので…
で、終わったらサンドペーパーをかけました。400番くらいまでかな?
出来上がったのがこちらです。

色が全然違う!
ということで、何で塗ろうか考えた挙句、アクリル絵の具デビューすることにしました。

正直なところ、安いからなのか、蓋がちゃんと閉まらない絵の具が一つありました。(そもそも4色くらいしか使ってないので、ほかは分かりませんが)
美術の成績が良かった記憶はないので、慎重に色を作っていきました。
赤、茶色、黒、紫を加えて、それっぽい色になりました。
塗り終わった状態がこちら。

結構うまくできてない?
ちなみに、筆で塗るとのっぺりした感じで、いかにも「塗りました!」って感じになったので、塗った後濡らしたティッシュでぽんぽんしました。そしたら結構いい感じ♪

ナットとペグの調整

さて、次はナットとペグの調整です。
調整前のナットを見てみましょう。

これ、実は落第です。
何故なら、この楽器は、5弦3コースの楽器なのです。(1弦と2弦にあたるところが二本ずつある)
なので、5弦で均等に溝が彫られいるのはNGです。
前の所有者がわからずやってしまったのか、それともちゃんとした楽器ではないためこのように作られたのか…詳細は分かりません。
が、民族楽器の場合、お土産用に作られたものもあるので、そのようなものの場合、そもそもが間違っているケースもよくあります。
なお、この楽器はシャレオツなペイントがされているので、もしかしたらお土産用かもしれません…

もともとのナットの高さも高かったので、一旦溝がなくなるまで削り、そのあと新しい溝を掘っていきます。私の場合、細いノコギリと棒やすりを使って加工しています。
はい、出来上がったのがこちらです。

ペグはぎちぎち言っていたので、コンポジションを塗りました。

こんな感じで、ペグがペグ穴と接触する部分に塗っていきます。
塗った後、穴に差し込んでぐりぐりします。

駒の製作

さて、今回一応駒はあるので、弦を張ってみます。
もともとついてた錆びた弦をつけたんですが、弦高が高い高い…
なので、駒も新しく作ることにしました。
使ったのは山桜の木です。

一番上がオリジナル。
一番下が最初に作った駒なんですが、低すぎました。
で、最後に作ったのが真ん中。こちらはぴったりでした。

弦をどうしよう?

んで、次は弦の張り替えですね。
もともと張ってあった弦のゲージは、確か5弦が0.8mmの巻き弦、残りが0.33mmくらいのやつでした。
ていうか1コースと2コースで音の高さ違うんだから、同じゲージっておかしいでしょ…
ここも例のごとく、計算して使用する弦の太さを考えます。
調弦は、C3、G3、C4です。
※ちなみに、冒頭の紹介ページにこの調弦書いてたんですけど、ソース書かなかった事後悔してます…どこ情報だったんだろ。

で、こういう表を作ってみました。

この表は、ギターの弦長648mmを基準として、音が変わると弦長がどのくらいになるかの表です。
上のエレキ、アコギというのは、弦のゲージをmmで表したものです。適当なメーカーのレギュラーゲージを書いています。色はそれぞれオクターブの位置を表しています。
弦長は約70cmなので、70cmの時にC3、G3、C4に近くなるゲージを選択します。
1コースは0.25mm、2コースは0.35mmのピアノ線を選択しました。ちなみに、2コースは持ってたピアノ線が0.35mmだからっていうのもあります。
言い忘れましたけど、この楽器、張るために必要な弦の長さが長いので、ギターの弦では代用できないかもしれません。12弦ギターの弦使えば大丈夫かも?
今回は、5弦だけはギターの弦で大丈夫そうだったので、手元にあったアコギの4弦を使いました。

細いピアノ線はホームセンターやamazonでは買えないので(0.35mmは買える)、販売している会社を探して買いました。最小単位が数百メートルなので、一生使いきらないと思います。

フレットの摺合せ

弦を張ったところ、フレットがガタガタで、音が詰まる場所があることが発覚。
生まれて初めてフレットの摺合せしました。ここまでガタガタってことはやっぱりお土産用なのかな…?
写真撮り忘れましたけど、ネックの反りを確認するときの要領で、フレットが出っ張っているところを探して、金属やすりで削る、という作業を繰り返しました。
最後にフレット丸く仕上げたかったけど、フレット丸くするやすりってお高いんですね…
今回は見送りました。

完成!

で、完成したので試奏したのがこちら。

おなか出てる~

なお、この後アクリル絵の具で塗った裏板、400番の紙やすりで軽くやすり掛けして、セラックニスで仕上げました。

ちなみに400番でとめたのは、もともとあまりてかてかしてなかったので、若干粗目の方がいいかな、という判断です。

という訳で、かわいそうだったルボッブが見事に復活しました!
楽器もきっと喜んでくれていると願います。

以上、お付き合いありがとうございました。